2025年6月12日
~腰痛の原因の8割は下肢にある!? 本当に見るべき場所とは~
腰痛の原因を問われたとき、多くの方が「腰そのものに異常がある」と考えがちです。たしかに、レントゲンやMRIでは椎間板や脊柱管に異常が見つかることがあります。しかし、実際に施術やケアを通して改善している現場の感覚では、「腰そのものに原因がない腰痛」が圧倒的に多いというのが実情です。
特に見落とされやすいのが「下肢(股関節・膝・足関節)の可動性の低下」。腰が痛くなる直接の原因は、実は下肢の動きが悪く、腰に無理な動きを代償させているケースが非常に多いのです。
人間の体は、股関節でおよそ120度の屈曲が可能です。しかし、股関節が硬くなり、屈曲角度が低下すると、足を上げたり体を前に倒す動作の際に、腰椎がその不足分を代償して屈曲することになります。
腰椎の屈曲は正常でも45度程度まで。股関節の不足をすべて腰で補ってしまうと、腰椎に強い負荷がかかり、ぎっくり腰や慢性腰痛、椎間板ヘルニアなどのリスクが高まります。
一方、股関節の伸展の可動域は15度ほど。この伸展動作が硬い人は意外と多く、歩行時の後ろ足の動きや、立ち上がり、伸びをするような動作で**腰が反りすぎ(過伸展)**になります。極端に言えば立っているだけで腰が反りすぎます。
腰椎の反りすぎは、脊椎分離症やすべり症の一因となるだけでなく、腰の詰まり感、違和感、鋭い痛みの原因になることもあります。
股関節の内転(脚を内に寄せる)30度、外転(脚を外に開く)45度が正常範囲ですが、どちらも制限があると、歩行時や立位で腰椎が**横に傾く(側屈)**ことで代償します。
この無意識な側屈動作の繰り返しは、腰椎の椎間関節に負荷をかけ、慢性的な腰痛の原因になります。
ゴルフやテニス、野球のような回旋系の運動では、**股関節の内外旋(各45度)**が必要です。しかし、この可動域が不足していると、腰を回して無理やり動作を補うため、腰椎が過剰に回旋し、痛めてしまうケースが多くあります。
特に回旋動作が多い競技や日常動作では、この**「回らない股関節」が「回りすぎる腰」をつくり出す**ため、知らず知らずのうちに腰痛の原因となっているのです。腰椎の回旋はわずか5度。実はほとんど動きません。
股関節の屈曲可動域は120度といっても、膝を曲げた状態での話。実際には、膝を伸ばした状態(伸展位)で股関節を90度以上曲げられるかどうかが重要です。
これができない人は、ハムストリングスなど後面の柔軟性が不足していることが多く、そのせいで腰椎が過剰に曲がってしまいます。
目安としては、膝伸展位で
このような可動性の低下は、前屈動作時の腰椎の過負荷になります。
長座体前屈や立位体前屈が苦手な人はほとんどこれが原因です。
腰痛に関わる関節の代表は、
これらの関節がしなやかに動かない(=弾力がない)状態になると、腰は過度なストレスに晒されます。可動域だけでなく「弾力」が低下していることも見逃してはなりません。
これらの関節、脊椎を一つ一つ動かすことや仙腸関節や腰仙関節は、自分の力では動かすことができない構造になっています。だからこそ、専門家による評価と施術が必要になります。
しかし一方で、自分でできることも多くあるのも事実です。むしろ、普段のセルフケアこそが、痛みの再発を防ぐ最大の予防策といえます。
さらに、当センターが提唱している**「腰痛肩こりケア体操」**も有効です。これは、筋肉だけを伸ばすストレッチとは異なり、関節の弾力を引き出す独自の体操で、慢性痛に悩む方に多くの改善例が報告されています。
腰痛=腰に原因、ではない
むしろ、腰が被害者であるケースが多い
このように考え方を変えるだけで、施術や運動指導の方針も大きく変わります。
こうした要因を評価し、改善することが、本当に腰痛を解決する第一歩です。
あなたの腰痛は、「腰が悪い」のではなく、**「腰以外が悪いせいで腰が代償して痛くなっている」**のかもしれません。
もし、「ずっと腰を治療しているのに治らない」「朝だけ痛い」「何となく不安定」といった悩みがある場合は、ぜひ下肢の可動性に注目してみてください。
そして何より大切なのは、自分で動かして、整えて、維持すること。
誰かに任せっぱなしでは、本当の改善にはつながりません。