2025年6月16日
〜筋肉は伸ばさない、収縮させる〜
多くの人が「柔軟性を高めたい」「体を柔らかくしたい」と考えています。ヨガ、ストレッチ、マッサージ……さまざまな方法が試されますが、思うように効果が出ない方も多いのではないでしょうか?
実は、その原因の多くが「筋肉を伸ばす」という概念そのものにあります。今回は、柔軟性の本質と正しいアプローチ法についてお話しし、腰痛や肩こりといった関節の痛み改善にもつながる方法をご紹介します。
「ストレッチすれば筋肉が伸びる」と思っている方は多いと思いますが、これは誤解です。筋肉はゴムのように伸びるわけではなく、筋繊維を構成するアクチンとミオシンという分子構造により収縮・弛緩しています。
この分子間には「摩擦」があり、柔軟性が低い状態というのは、この摩擦が高まり、滑りが悪くなっている状態です。つまり、物理的に引っ張っても摩擦が強ければ動かないということ。
ヨガや静的ストレッチ(スタティックストレッチ)を行っても、「柔らかくなった気がしない」「むしろ痛くなる」という人がいます。実際に、半数以上の方がスタティックストレッチで柔軟性が改善しないというデータもあります。
その理由は、筋肉に十分な反応を引き起こせていないためです。ただ静止した姿勢でじっと伸ばしても、摩擦を取り除くきっかけが不足しているからです。
では、どうすれば筋肉が反応して柔軟性が向上するのか?
答えは、**コントラクトリラックス(Contract-Relax)やホールドリラックス(Hold-Relax)**といった「PNFストレッチ」と呼ばれる手法です。
このように意図的に筋肉に力を入れてから抜くことで、摩擦が一時的に軽減され、筋繊維がスムーズに動き出します。すると、今まで動かなかった筋が「反応」し、可動域が改善されます。
この方法で大切なのは「反復回数」です。1〜2回行っただけでは変化は乏しく、最低でも10回程度の反復が必要です。日常的に使っていない関節や筋肉ほど、反応が遅いため、毎日少しずつ継続することが成果につながります。
当院で推奨している「腰痛肩こりケア体操」は、まさにこのコントラクトリラックス法を応用しつつ、関節や筋肉を収縮し弾力性を高めるよう設計されています。
筋肉をただ伸ばすのではなく、関節ごとに「収縮させる」動作を繰り返す構成となっており、弾力の回復、柔軟性の向上、支持性(安定性)の強化に最適です。
たとえば…
と、部位ごとに設定されています。
柔軟性と混同されがちですが、「支持性(関節を支える力)」も重要です。柔らかくなるだけでなく、動作中にブレない・安定するという要素もなければ、柔軟になった分、逆にケガをしやすくなる場合もあります。
「腰痛肩こりケア体操」では、自重や軽い力を入れながらの反復運動により、関節周囲の筋肉が適切に反応・収縮し、柔軟性と支持性の両方がバランスよく育つようになっています。
肩こりや腰痛、膝痛などの慢性的な関節痛には、関節の可動性の低下や、支持力の低下が背景にあることが非常に多いです。
筋肉が柔らかく、関節がしっかり支えられていれば、痛みは出にくくなります。
また、関節の可動域が広がることで、
といったメリットもあり、慢性痛の根本的な改善につながるのです。
柔軟性と支持性が高まると、スポーツにも大きな効果があります。
当院の体操を継続しているアスリートからは、「可動域が広がってフォームが安定した」「ケガをしなくなった」という声を多くいただいています。
柔軟性を高めるには「一度やって終わり」ではなく、毎日コツコツと行うことが重要です。
特別な器具や時間も必要ありません。立位での体操は5分、床で行うパターンでも10分で出来ます。毎日続けることで、身体は確実に変わります。
ぜひ、あなたも「ただ伸ばす」から「収縮させる」柔軟性アップ法へシフトしてみてください。
身体の変化を、きっと実感できるはずです。